高松高等裁判所 昭和28年(ネ)272号 判決
控訴費用中参加によつて生じたものは参加人等の負担とし、その余は控訴人八幡神社の負担とする。
二、事 実
控訴人等は「原判決を取消す、被控訴人は控訴神社に対し原判決添付目録記載の土地及びその地上の立木竹を無償譲与する義務のあることを確認する」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は、次の事実を附加する外、之と牴触しない範囲で、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
控訴人等の主張事実
一、本件は行特法一条の定める公法上の権利関係に関する訴である。
二、被控訴人が昭和二三年三月一一日の区会の決議を実行することを昭和二五年一一月十八日控訴神社に通告したというのは、甲第一二号証の通知のことで、それは神社周辺の立木を売却する旨の通知である。被控訴人は同月二五日その立木を訴外木内玄一に売渡す契約をしたが、控訴神社が同年十二月五日徳島地方裁判所川島支部に仮処分を申請しその決定があつたので、木内はその売買を解約した。本件地上の立木は全部神社の尊厳に不欠缺のものである。
三、本件土地中一五〇番、一五一番の二、一五三番の二の山林三筆は明治二四年に氏子たる麻植兼太郎、郡寛三郎が神社に寄附したもので、その内六四坪は宗教上の儀式に用いる馬場先であり爾余は約八〇年生の松林である。また四七番の二、四八番の原野二筆はその上に鳥居、石碑があり、行事場たる安宮所となるところである。右山林三筆と原野二筆との間にある道路は係争外である。
四、本件一〇筆は全部控訴神社が境内地として無償使用即ち被控訴人に賃料を払わずに使用しているもので、無償使用というのは免租地なりや否やとは関係がない。
五、控訴神社が被控訴人所有の財産を使用することは、憲法八九条地方自治法二一二条に違反するから、昭和二二年四月二日内務文部次官通牒(甲第六号証の一、二)に従い、同年法律五三号所定の国有境内地に準じて処理すべきである。そこで控訴神社は同年一〇月及翌一一月の二回に本件土地の譲与を被控訴人に申請し二三年三月一一日被控訴財産区の区会は「神社の尊厳に欠くことのできない程度の木を残し、あとは学校の材料に寄附し、土地を神社に寄附する」旨議決した。しかるに被控訴代表者がその執行をしないので、本訴に及んだのである。
被控訴人の主張事実
一、憲法八九条、地方自治法二一二条の趣旨により、昭和二三年三月一一日被控訴区の区会は本件に関し「神社の尊厳を欠くことのない程度の立木を残し、後は学校の建築材料に寄附し、残りの土地は神社え寄附する」旨決議した。村政上の理由で学校建築が予定通り運ばなかつたので、その決議の実施がおくれていたがその後学校建築の議が決定したので、昭和二五年一一月一八日右決議を実行すべく控訴神社にその趣旨を通告したところ之を不服として訴を提起したのである。
二、1、古来控訴神社が無償で使用していたのは本件一五五番、一五五番の二の地目が村社地となつている二筆の一部分のみである。
2、本件一五四番、一六三番の山林は被控訴人が管理し、山林手入費用はもとより番人をつけてそれに給料を支払い、枯木一本の処分でも区会の承認によつて処理して来たのである。
3、本件一四九番山林は神社の儀式祭典等には無関係の土地で区会の議決によつてその一部は戦災者住宅建築の宅地として貸与し、現に家屋数戸が存在する。また同土地の中央には忠魂碑があり、全村民が毎年慰霊祭を行う場所に使用し、同土地中平坦な約六畝は戦時中食糧増産のため小学校生徒により開墾され、現況は畑地で農作物が植えられている。
4、本件一五〇番、一五一番の二、一五三番の二、四七番の二の四筆はいづれも私人の寄附によるものであることは認める。しかし宗教上の理由で寄附されたのではない。すなわち、明治、大正年代県下一般に民衆娯楽として直線競馬が行われた当時、その競馬場にするため個人が大字西麻植部落に寄附したもので、神社の儀式祭典等に使用し来つたものではない。直線競馬が廃れて後は大半が村道として使用されている。右四筆は明治二四年以後大字西麻植の所有となつたものである。
三、古来から控訴神社の所有であつたと推定されるのは本件土地中地目が「村社地」となつている二筆のみである。従てその二筆及び同地上立木は尊厳保持林として神社に譲与し、さらに将来の宗教活動に支障を来さない為右二筆以外の土地も一部譲与することとし、区会が満場一致で前記決議をしたのである。
(各証拠省略)
三、理 由
控訴人等は、「地方公共団体所有に属する財産についても、憲法八九条地方自治法二一二条の趣旨により、昭和二二年法律五三号及び同年勅令一九〇号が準用され、その財産を使用する神社の申請があれば地方公共団体はその財産を神社に対し、行政処分として無償で譲与する義務がある」と主張する。右法律第五三号及び勅令は明らかに国有財産のみを対象として規定しているから、地方公共団体所有の財産に適用されないことは明瞭であり、また憲法八九条、地方自治法二一二条の趣旨によるも当然準用さるべきものとは解し難い。地方公共団体の財産を神社が使用することは、右憲法及び地方自治法の規定に違反するが、そのことから直に、地方公共団体は当該財産を神社に無償譲与する義務が生ずるものとはいえない。控訴人等は昭和二二年四月二日内務、文部次官の通牒を引用するが、通牒は事務上の指導であつて法的拘束力を有しない。要するに前記法律五三号及び勅令が本件に適用又は準用されることを前提とする本訴請求は、爾余の判断をまつまでもなく失当である。
また本訴は、被控訴区が控訴神社に対し、本件財産を無償で譲与する公法上の義務があることの確認を求めるものであるが、成立に争のない甲第一一、一二号証甲第一三号証の一、二に弁論の全趣旨を参照すると、昭和二二年十月及び翌一一月に控訴神社から被控訴区に本件財産譲与の申請があつたので、被控訴区の区会は二三年三月一一日に「神社の尊厳を欠かない程度の木を残し、他は学校の建築材料に寄附し、残りの土地は神社に寄附する」旨決議し、被控訴区の代表者はその決議の趣旨を実行するため、二五年一一月一八日控訴神社に対し、本件地上の立木の一部を他に売却処分する旨通知したこと、即ち控訴神社の申請の一部を却下する決議及び処分通知をしたことが認められるところ、その処分に対しては出訴期間内に取消訴訟を提起することが法律上認められているから、それに依らずに、別に行政処分義務確認の訴を提起することは許されないものといわねばならない。本訴はこの点においても失当である。
よつて本訴請求を排斥した原判決は相当であるから民訴法三八四条九五条八九条九四条を適用して、主文の通り判決する。
(裁判官 前田寛 太田元 森本正)